いわきフラレポート
呉服処 根本 三代目店主 根本紀太郎(ねもときたろう)さん
<フラシティいわき グッズ物語> オリジナル風呂敷「フラしき」編
Q: 「呉服処 根本」について教えてください
創業は大正10年、来年(2021年)100周年を迎えます。
祖父が創業して約60年間、二代目の父が約10年間、私が三代目で約30年間。私は来年ちょうど還暦なので、自分自身にとっても節目の年かなと思います。
100年間で呉服商売も変化してきました。
祖父は、モダンとか粋な分野が得意で花柳界(かりゅうかい)にもたくさんのお客様がいたので、私も継いだ頃「あんたのおじいさんは、とっても趣味が良くてね」なんて、だいぶ言われました。
父は、お客様の体形や好みに合わせて、反物(たんもの)を自分で裁断してから仕立て屋さんに出すような人でした。
どちらも私にはできないことなので、祖父も父もすごいなと思います。
父の代までは95%くらいが和服のお仕立ての商いでしたが、私が継いだ平成の始め頃には、お仕立てもだいぶ減ってきていて、和服の商売の難しさを感じるようになりました。
ただ、日本人のDNAというか、日本的なものにはホッとできるし、知恵や工夫がグッと詰め込まれた日本文化を伝えていきたいと思っていました。
すばらしい日本文化を一度は体験してほしいという思いが、「風呂敷伝承師(ふろしきでんしょうし)」の活動につながっていきました。
Q: 「風呂敷伝承師」の活動について教えてください
私自身、特に風呂敷を使って育ったわけではありません。
店を継いだばかりの頃、引き出しから祖父が現役時代に行商に使っていた風呂敷が出てきたんです。
すっかり忘れていた子どもの時の記憶がよみがえってきて、祖父が使っていた姿を思い出すように自分でも使うようになりました。
調べたり勉強しながら使っているうちに、なかなかこれは便利だなと。そのうち、公民館などでお話しする機会が出てきました。平成5、6年頃からのスタートですね。
今では、高齢の方のリハビリ体操の集まりや、幼稚園や小中学校などにもお呼びいただいて、下は5歳から上は100歳くらいまでの方々にお話ししています。
2019年は特に多くて年間約100回、風呂敷伝承師としての活動は通算500回くらいになると思います。
Q: フラシティいわきオリジナル風呂敷「フラしき」について聞かせてください
いわきらしい品物をしばらく作れていなかったところに、フラシティいわきのデザインを見て「風呂敷にしたらおもしろそうだな」と思っていました。
同じタイミングで、いわき市(創生推進課)側にもアイディアがあり制作が実現しました。
柄は2種類ありますが、特に青い方はおもしろくなったと思います。
対角に半分ずつ色が違うので、結び方で印象が大きく変えられます。
サイズも2種類。
50×50cmは、お弁当を包んだりするのに便利ですね。90×90cmは、エコバッグにちょうど良い大きさです。
素材は実用的な木綿です。
丈夫なので重いものも入れられますし、汚れても気軽に洗濯できます。使えば使うほど柔らかく結びやすくなって、とても使いやすいと思います。
明るいデザインは、「何で包んでるのかな」って人目もひきますよね。
Q: 改めて、風呂敷の魅力とは? エコ&フレキシブルですよね!
「包」という漢字は、お腹に赤ちゃんを宿した女性の姿を表しているそうです。風呂敷でやさしく包むことは、中のものを大切にしている気持ちそのものだと思います。
そして、簡単な方法の組み合わせで何でも包めてしまう風呂敷からは、日本古来の知恵や工夫、日本人の頭の柔らかさを強く感じます。
専用のものがなくても考え方次第で代用ができること、それは今の時代にこそ必要な柔軟さだろうと思っています。
地球環境が変わってきていることも気になっています。
私ができることはささやかかもしれないですが、近場へは自転車に風呂敷で包んだお届け物を積んで出かけるようにしています。
今後も風呂敷を通して、伝統的な和の心を子どもたちにも多く伝えていきたいと思っています。
【インタビュー:2020年(令和2年)10月】
◆ インタビューの様子を動画でご覧いただけます。
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